作文少女
小学3年生のときに、一人の小柄な女の子が転校してきた。そして、その彼女が3年生のときに書いた、母親に関する作文で衝撃を受けた。私の記憶が確かであれば、「男まさりの母」という原題だったはずだが、今となってはわからない。家事を家政婦さんに任せ、夫婦で仕事をしている、活発な母親の様子が書いてあった。すごく上手い作文だった。何故なら、彼女は教室の前に出て、みんなの前でその作文を読んだくらいだから。
この時、私は2つの意味で衝撃を受け、そして嫉妬した。上手い!、実に上手い。この頃の私は作文が大の苦手だった。そして2つ目は、作文のテーマになる、ある意味豪快なお母さんの存在だった。それに引き換え、自分の母親には何ら華がない。母の日などに、全員が母親をテーマに作文を書いたはずだが、あいにく自分はどんな内容を書いたのか、他人の優れた作文のことは覚えていても、自分のことは覚えていない。その程度の文章だったと思う。
数年前に、彼女に同窓会のときに会って、この作文のことを覚えているか尋ねてみたが、本人の記憶はあやふやだった。ただ、同窓会の準備で、学校のかつての文集が出てきて、それにまさにこの彼女の作文が載っていた。やはり良い出来の作文ということで、年次で発行される学校の文集に載っていた。作文の中身は私の記憶とぴったり一致していた。ただ、作文のタイトルは柔らかく「おかあさんのしごと」と改題されていた。先生が気を使っての処理だと思った。
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