読書感想画
本を読んでその感想を絵で表現しろとは難しい注文だ。仮に「この本、つまんない」という感想を持ったとしたら、その意思通り、つまんない絵を書けば良いのだろうか?。けどきっと、「ふざけるな!」、と当時なら教師の拳固でも飛んできたことだろう。文字や言葉という高度なコミュニケーション手段を持っておきながら、その能力を封じて、感想という極めて抽象的な対象を絵で表現しなくてはならない。難しい。文字が発生する以前の壁画絵のようだ。
感想と言いながら、実際にそれを絵として表現するに当たっては、読みながらイメージしたシーンをコラージュ状に並べていくことになる。第三者がその絵を見て、何の本が題材なのか分かった方が良いし、もしそれが無理でも本のタイトル(世間的に知られているものなら)を聞けば、「ああ、なるほど」と言わせるぐらいのものが要求される。仮に「泣いた赤鬼」の読書感想画なら、赤鬼が泣いた絵になるだろう。
小学六年のときに学年皆で「蜘蛛の糸」の感想画を書いた。誰もが御釈迦様と蓮の池、糸を伝わって登ってくる、かんだたや悪人どもの絵を思い思いに描いた。しかし、そのどの絵を見てもそこからどんな感想を持ったのかは読み取れない。そもそも読書感想画なる概念の絵など存在せず、単にこれは「読書想像画」と呼ぶのが正しいような気がする。もし、感想を純粋に絵にするなら、冒頭の例の「つまんない絵」というのが正しい姿と私は判断する。
かく言う私は小学生のときに、表紙の絵をそのまま描くこと一回、挿絵をそのまま描くこと二回の経験がある。これは感想を如何に表現すべきかという悩みに耐えられず、逃避した結果こうなった。とりあえず、この手を使えば本を読まなくても何とかこなせる課題ではあるが、本を指定されるとこの反則技も封じられてしまう。
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