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宿題の船

 私が子供の時には「夏の友」という小冊子が渡された。市内の子供たちは学校が違っても同じものを使用していたようで、きちんと印刷・製本されたものだった。中身は国語、算数、理科、社会、それに体育や音楽、図画工作に至るまでの全教科が網羅されていた。ページの配分としてはこれを一日一ページのペースで片付けていく具合になっているが、もらった当日、分かるところや面倒でないところをまず一気に片付けてしまう。そしてしばらくこれを放置し、夏休みが終わりに近づいた頃に思い出したように引っ張り出してきて、残りをまた一気にやっつける。もちろんその間の期間はのんびり過ごす。各ページにやった日と天気を記さねばならないが、毎日コツコツとやっていないのがばれるため、これが最も困った。

 面倒なページは後回しになる。それは図画工作の類である。工作はまず材料がないといけないし、写生はその場所に出掛けないと描けない。それが主な原因となる。小学三年生のときに、工作のページで船を作らねばならなかった。かまぼこ板程度の板に両脇に割り箸を輪ゴムで固定し、それに輪ゴムをわたしてプラスチックの板を貼り付ける。このプラスチックの板をくるくる巻くと輪ゴムがねじれ、その戻る力を推進力として動く船を作らねばならなかった。

 この件について親に相談した。そしたら材料について大工をしている友人に電話をしてくれた。その翌日に材料となるべき板が届くはずだったが、届いたのは材料ではなく、既に船の形に加工されていた。アイロンの底の形をした板で、平べったいものの、上面よりも下面の方が小さくなるように船の形に面取りがされ、カンナも掛けてあった。

 二学期が始まり、一斉に提出された宿題の船の中で、我が船は軍艦のごとき異彩を放っていた。

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